カーリング情報学

CURLING INFORMATICS

研究背景と課題

カーリングは大きな発展の余地がある将来有望なスポーツとして注目を集めています。また、現代スポーツにおいて支援技術の開発もまた重要な課題となっています。そこでアルゴグラフィックス北見カーリングホールに研究室を構え、カーリングに対する科学的支援を目的としたプロジェクトを展開しています。特にカーリングが「氷上のチェス」と呼ばれる所以である重要な要素、戦術・戦略に対する科学的な支援を目的としています。

研究目的

本プロジェクトはカーリングに対する科学的支援、選手の競技力向上を目的としています。

課題解決に向けた取り組み

カーリング版棋譜データベースの構築

  • 情報を記録する技術
  • 情報を共有する技術
  • 情報を可視化する技術
  • 情報を解析する技術

冬季スポーツ科学研究推進センターとの連携

冬季スポーツ科学研究推進センターは、平成28年4月に設置されました。地域と密着し、工学的視点から冬季スポーツの研究に取り組む、世界的に前例のない研究組織です。
センターと連携し、地域での冬季スポーツの発展・定着と、冬季スポーツアスリートの競技力向上・国際的活躍を目指します。

デジタルスコアブックiCE

DIGITAL SCORE BOOK iCE

概要

デジタルスコアブック「iCE」は試合情報を記録・分析するアプリケーションです。過去の試合に基づいて局面に応じたショットを提案する機能や試合エンド毎にチーム・個人別のショット率を計算する機能があります。本研究室はこの技術で特許を取得しています。(特許第6435119号)

これまでの成果

  • 試合データの詳細な分析を実施(試合サマリーの作成)
  • 世界・日本トップレベルの特徴の解明
  • ポジション毎の戦術役割の特徴の解明
  • チーム毎のショット・得失点機会の特徴の解明
  • 試合実況放送のスタッツ分析支援システムへの応用

などに成功しています。

赤外線ストーントラッキングシステム

INFRARED STONE TRACKING SYSTEM

 概要

赤外線ストーントラッキングシステムはアルゴグラフィックス北見カーリングホールで実際に活用されています。赤外線カメラと赤外線LEDを用いて移動するストーンの位置を逐次計測し、氷面下に敷設した赤外線LEDモジュールを用いてキャリブレーションを行います。また、ストーンに設置した赤外線LEDを赤外線カメラで撮影し、画像解析によってストーンの位置を算出し、軌跡を生成します。

これまでの成果

電気通信大学・北海道大学と連携し赤外線ストーントラッキング
システムの開発に成功しました。
赤外線ストーントラッキングシステムの開発にあたり、

  • 氷の反射を考慮した赤外線を使用する技術の応用
  • 赤外線を発光する小さなモジュールを開発
  • 赤外線カメラ画像を処理してストーンを認識する仕組みを実装
  • ストーンの位置を把握して軌跡として記録表示する仕組みを実装
  • カーリング場での実証実験を繰り返して性能評価を実施
  • 最高で誤差数センチの測定を実現
    ・記録した軌跡を氷の上に投影する技術も開発

などの様々な技術の開発に成功しています。

AIシミュレーションシステム

AI SIMULATION SYSTEM

概要

電気通信大学・北海道大学と連携し、デジタルカーリングと戦術推論AIの開発に取り組んでいます。人工知能を活用した戦術・戦略ナビゲーションを目指しています。戦術AI同士による対戦シミュレーションを行い、複数アルゴリズムによる推論実行が可能です。対戦データはサーバで共有し利用します。

 これまでの成果

  • カーリング戦術・戦略を実施できるシミュレータの開発戦術
  • 戦略を推論する様々な人工知能の開発

に成功しています。

人工知能同士が対戦する「デジタルカーリング大会」を開催し、それによる学習データの拡大を行いました。現在最も優れた人工知能は大学カーリング部選手に匹敵する戦術推論能力を有しています。

競技動作測定システム

ATHLETIC MOTION MEASUREMENT SYSTEM

概要

上下方向・左右方向・ねじれ方向の動きを測定し、測定結果を無線でPCに送信することで解析を行います。スウィーピングの力がどの程度効率よく伝わっているかがわかり、北見工業大学カーリング部のトレーニングで活用されています。

 これまでの成果

カーリングの基本的かつ重要な動作に氷を擦る動作(スウィーピング)があります。
スウィーピングを測定するスウィーピングパワー測定装置の開発に成功しました。

カーリングロボット開発

DEVELOPMENT OF A CURLING ROBOT

概要

信州大学と連携し、ストーンを投げるロボットの開発に取り組んでいます。

 これまでの成果

  • ストーンを固定する(掴む)仕組みの実装
  • ストーンを弾き出す仕組みの実装
  • ロボットを制御するプログラムの実装

に成功しています。
このロボットはトレーニング支援や人間との対戦を目指しており、

  • 人間の競技者との対戦実験を通して課題を特定・改良
  • ストーンが曲がるメカニズムの解明への応用

も行っています。

その他にも、カーリングに関する様々な研究を行っています。
詳しくは下記ページをご覧ください。

 今後の予定

  • 実験データの収集と実証的競技支援
  • iCEの更なる改良
  • xR技術を活用したバーチャル競技支援技術の開発
  • 遠隔地からの競技指導の実現
  • 遠隔地からのアイスメイキング監修